2010年 10月 25日
『彷徨の雲 北斗の拳ジュウザ外伝』(上下巻)を読んだ
今回はちょっと番外編で劇画を取り上げてみたいと思います。
先週末に本屋に行って、ふとマンガコーナーをのぞいたら山積みになっていたのが標題の書。ラオウ、トキ、ユリア、レイに続き、『北斗の拳』に登場したキャラ5人目のスピンオフ作品です。
私はこの「雲のジュウザ」というキャラ好きでしたね。もしかすると『北斗の拳』の中では一番好きだったかも知れません。まったく努力していないのに天賦の才だけで、ラオウに匹敵する実力を持つ男。こういう天才型ヒーローってのは日本人にはウケがいいようです。眠狂四郎しかり、秋草新太郎しかり、時代劇の美男子の一つの型ですな。思いを同じくする方々も結構おられるようで、ちょっとググってみたら、「行雲流水」というファンサイトまで出来てました。
『北斗の拳』最大のヒロイン、ユリアに恋焦がれながら、異母兄妹という間柄で決して結ばれぬという悲運を背負ってもいる男。ユリアへの想い故に無頼に走り、「おれは雲のように自由きままに生きる」とつぶやく姿がなにしろカッコイイ。こういう言葉が吐けるほどの才能に恵まれてみたかったもんだ、と何度もため息をついたことを思い出します。
さて、この物語では、ジュウザは異母兄であるヒョウガ、南斗政権の一派を極めたレイやサウザーとかかわりあう姿も描かれます。懐かしいキャラたちとのカラミには思わずニヤリとさせられちゃいました。まあ、こういうファンサービスはスピンオフ作品ならではのものでしょう。
最後は本編のストーリーと合流し、ラオウと戦って敗れるところで終わりますが、劇画の終わり方とアニメの終わり方を巧みにミックスさせて独自の終わり方にしているところにもニヤリ。この終わり方も悪くありません。
ここで、根本的なツッコミを一つ。ジュウザはなぜケンシロウがユリアと逢うのを見届けないうちにラオウのもとに戻ってしまったんでしょうか?ラオウの足である黒王号を奪ってしまったわけですから、極端に言えば、1年でも2年でもラオウを留めておくことが出来たはずなのに…。「雲ゆえのきまぐれ」にしてはちょっと軽率なんですよね。まあ、もっともそこでケンシロウとユリアをあっさり逢わせてしまったんじゃ、ストーリーにふくらみが出ませんけどね。
もう一つ、ちょっと不満に感じたのは絵柄でした。ごく個人的な感想を言わせてもらえば、ジュウザの強さを実感できる描き方がなされていない気がしますね。ジュウザの我流拳法によって破壊された人体というものを、もっと克明に描いて欲しかった気がします。原哲夫氏の殺戮シーンのリアルさが結構好きだったってのもあるんですがね…。
総体的にはなかなか面白い仕上がりになっていたと思います。それにしても、無理矢理ストーリーを継ぎ足したことを逆手に取って、こういう作品を作ってしまうとは…、出版社の商魂が一番強力です。
by lemgmnsc-bara
| 2010-10-25 23:24
| 読んだ本