2010年 06月 11日
『そこがいいんじゃない! みうらじゅんの映画批評大全2006-2009』を読んだ
オモロイモノ好きのイラストレーターみうらじゅん氏による映画評論エッセイ集。『映画秘宝』という雑誌に連載されているものの単行本化です。
先日紹介した宇多丸氏の『ザ・シネマハスラー』とは真逆のユル~い評論集です。ただしユルいのは文体だけのオハナシで、観るべきところはきちんと観て批判すべきはきちんと批判しています。
氏独特の「童貞」目線でもって、やや斜に構えたインタビューなんかにも答えており、それも掲載されています。この「童貞」目線、モテないくせに自意識が強く、プライドだけは高かった童貞時代を長らく送ってきた私にはよくわかります。映画の中では、サエない男がヒロインとの恋を成就させる場面が数多く描かれますね。「俺だっていつかはあんな彼女ができるさ」って思ってた期間の長かったこと…。ボーイ・ミーツ・ガールが物語の基本だとはよく言われますが、映画における最大のファンタジーってのは、サエない童貞クンが美女と結ばれるところにあるんじゃないんですかね。マドンナと決して結ばれることのない寅さんなんかはその幻想を逆手に取った哀愁が一番の観せどころですし、ジェームス・ボンドみたいな絶倫ヒーローは童貞クンの理想像でありますな。
この本は比較的最近の作品を対象にしているので、すでに観てしまった作品が多く、「あ、コレ観てみたい」という衝動は『色即ぜねれいしょん』以外には起きませんでしたが、「なるほどこういう観方もありか」という感覚を数多く味わいました。肩の凝らない映画評だったと思います。
by lemgmnsc-bara
| 2010-06-11 21:02
| 読んだ本