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『巨人-阪神論』を読んだ

巨人‐阪神論 (角川oneテーマ21)

江川 卓 / 角川書店(角川グループパブリッシング)

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現役時代、巨人のエースと阪神の四番打者として熱い戦いを繰り広げた、江川卓氏と掛布雅之氏の対談本。ライバルだった両氏がいまだからこそ語れる、伝統の巨人-阪神戦のインサイドストーリーを語り合います。

現役時代の両氏の対決は力と力のぶつかり合いだったというのは記憶しているのですが、実況のアナウンサーが「新しい伝説を築く両雄の対決です」みたいに散々煽り立ててばかりいたので、なんとなく一歩引いて醒めた目で「それほどのモンかい?」と思いながら観てましたね。巨人-阪神戦には、例えば長島-村山の天覧試合サヨナラホーマーとか、江夏が王から節目の三振を奪るために他の打者にはわざと三振させないようなピッチングをしたとか、数限りない「伝説」がありますな。私自身は当然そうしたシーンをリアルタイムで観ていた訳ではなく、活字で追体験したもので、伝説というのは活字で読むものだ、という考えが強くあったため、リアルタイムで観た両者の対決にはピンと来なかったんだと思います。

まあ、私の野球観戦眼なんてのはシロートそのもので、打ったか打ち取ったかという結果しか気にしておらず、その結果に至るまでの様々な努力や葛藤などに思いを馳せるという感覚が欠如していましたからね。江川氏の「掛布との勝負ではインハイのストレートにこだわった」という言は新鮮な驚きでした。バッターにとっては一番長打の出やすいコースにあえて自分の一番威力のある球を投げ込む。まさしく速球で名を馳せた江川氏と押しも押されぬ阪神の4番バッター掛布氏の真っ向勝負ですな。もっと野球に関する感度を上げて見ておくべき対決でしたねぇ。今はもう望むべくもありませんが。

果たして今の日本球界に江川-掛布対決に匹敵する勝負はあるでしょうか?力のある選手はすべてメジャーに行ってしまい、中軸を外国人が占める今の日本球界には「伝説」になりうる対決は残念ながら存在しないと言わざるを得ません。グライシンガーと金本が対決しても、それは単なる対戦であって、そこにライバル同士のプライドをかけた戦いという「物語」は存在しません。物語という「付加価値」のない野球は単なる棒振り遊びです。プロ野球中継の視聴率が上がらない理由がわかるような気がしますね。

今後江川-掛布に匹敵するようなライバル物語は生まれる可能性は少ないでしょうね。WBCの感動はナショナリズムの高揚であって、勝負そのものの物語ではないですから。むしろ日本と韓国の対決あたりの方に物語が多数生まれそうな素地が残っているように思います。
by lemgmnsc-bara | 2010-06-11 11:59 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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