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『冬こそ獣は走る』を読んだ

冬こそ獣は走る

北方 謙三 / 光文社

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北方謙三氏のハードボイルド小説。設定は現代です。氏の現代版作品を読むのは久しぶりです。少なくともこのブログを始めてからは読んでいません。なんたって『水滸伝』に魅了されちゃいましたからねぇ。

で、久しぶりに読んだ、現代モノは相変わらず骨太で男っぽい作品でした。

建設会社勤務の中村真司は、冬山登山の際に滑落した仲間を死なせてしまうという経験をします。その仲間を担いで麓まで戻ってきたのですが、その仲間は徐々に徐々に弱っていき、麓に着く前にこと切れてしまいます。なにやら、『水滸伝』に出てきた’死域’という言葉を髣髴とさせるエピソードですな。この体験を経て以降、真司は心の中に大きな虚無を抱えてしまうことになります。

ある現場で、真司は手抜き工事が行われていることに気づきます。ありのままを報告しようとする真司に現場の鳶の頭が襲いかかってきますが、真司は彼を撃退。しかしこの喧嘩が元で真司とこの鳶の頭は仲間となります。戦いを終えた後、敵が味方に変わり、どんどん味方が増えていくっていう展開は『リングにかけろ』とか『魁!男塾』に近いものがありますね。こっちの物語には必殺技は存在しませんが^^;。

手抜き工事をありのままに報告した真司は、何故か社長に呼ばれ、建設会社自らが施工主となるマンションの建設現場を任されることとなります。なにやら意味ありげに含みを持たせた言葉を操る社長。真司は真意を問いただそうとしますが、果たすことができないまま、現場を任されます。

建設が始まってからは様々な横槍が入ってきます。建設予定地に建っていた古い建物を取り壊した後の瓦礫を運び出すためのトラックが来なくなったり、鉄骨を運び上げるためのクレーンに火をつけられたり。誰が、一体何のために?そして社長をはじめ、社の重役たちが握っている秘密とは?ページをめくる毎に高まっていく緊張感。これぞハードボイルド小説作家の真骨頂ってとこですかね。映画のレビュー同様、この辺で逃げ口上を使わせていただきます。これ以上は実際に読んでくださいm(_)m。

散々緊張を煽った割には結末がちょっとさばさばしすぎちゃってるなぁ、というのが正直な感想とだけ述べておきましょう。

それにしても、相変わらず、男臭い作品ですねぇ。私はタバコは吸いませんが、タバコを吸ってみたくなったし、ウイスキーをロックで飲んでみたくなったし、スピードの出る車ですっ飛ばしたくもなりました。おそらくむせて、二日酔いになって、スピード違反でとっ捕まるってのがオチでしょうけど…^^;。北方ワールド全開の作品でした。『ガキ帝国』の拙いケンカシーンなんか問題にならないくらい迫力のあるケンカの描写にシビレましたね^^。
by lemgmnsc-bara | 2010-03-19 19:20 | 読んだ本

映画、演劇、お笑い、あまり肩の凝らない小説等々…、基本的にエンターテインメント系に特化したブログにします。

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