2010年 02月 07日
『ぐるりのこと』鑑賞
ある人が書いた映画評を読んで是非観てみたくなったのが表題の映画。自身がゲイであることをカミングアウトしている橋口亮輔氏監督作品。橋口氏はこの作品の前まではゲイの恋愛をテーマにした作品を数多く制作していたようです。残念ながらその辺の作品はまだ観たことがないので感想の書きようがありませんが、「ストレート」な夫婦の情愛を描かせても違和感のない作品を作られる方ですな。
出版社に勤める翔子(木村多江)と日本画家を目指しながら果たせず、バイトで食いつないでいるカナオ(リリー・フランキー)の夫婦は貧しいながらも第一子の誕生を控えて幸せな日々を送っていました。カナオはテレビ局の法廷画家という定職を得、いよいよ充実した生活を送れると期待していたある日、生まれた子供が急死してしまうという悲劇に見舞われます。
子供の死を契機に翔子は心身ともに極度の不調に陥り、ついに職場も辞め、半ば引きこもりの生活となってしまいます。ショックを引きづった翔子は自分でも抑えきれない衝動でカナオにつかみかかり、大暴れするなどの行動に出ます。カナオはそんな翔子をとがめだてもせず、ただ受け止めます。この辺の描写がなんだかちょっと貧乏くさい感じがしましたね。「神田川」が描く四畳半フォークの世界を思い起こさせられました。経済的には決して豊かではないけれど、お互いを思いやる温かい家庭に訪れた悲劇。やり場のない悲しみをぶちまける妻とその妻を淡々と受け止める夫。男としてはこういう場合、ただ女の気が治まるまでじっと受け止めてやるしかないんだろうな、ということをうまく表現していたと思います。
カナオは法廷画家としてイラストを描き続けます。その過程で、世間を騒がした数々の事件を髣髴とさせるさまざまな事件と遭遇します。法廷画家という特殊技能集団から見た法廷の様子という切り口はなかなかユニークだったと思いますが、翔子とカナオの日常とどんな関係があるのか、今ひとつ理解できませんでした。社会現象に対するある種のパロディーとして、ストーリーとは関係なく受け取るべきなんでしょうかね。それはそれで面白くはあったんですが…。
カナオの淡々としたそれでいて粘り強い支えにより翔子はだんだんと自分を取り戻していきます。ある寺の本堂の天井の絵を依頼され、それを完成させていくうち、苦悩を乗り越えて新しい生き方を目指す気力がよみがえってきます。
ラスト近くで翔子の描いた天井画を二人で寝転がって見ながらちょこっとじゃれあうシーンはほのぼのとしていてよかったです。温かーい気持ちになれました。時には激しく感情をぶつけ合うことがあっても、最終的にはお互いに笑って仲直りできる夫婦ってのは理想的です。当家は…、ご想像にお任せします^^。
by lemgmnsc-bara
| 2010-02-07 20:04
| エンターテインメント