2010年 01月 11日
『イントゥ・ザ・ワイルド』鑑賞
一人のエリートの青年が、大学卒業後何もかも捨てて荒野での生活に入るという物語。村上春樹氏か柴田元幸氏が翻訳しそうなアメリカの青春小説の映画版というところでしょうか?
主人公は大学を優秀な成績で卒業しますが、いつの間にか家族の前から忽然と姿を消し、放浪の旅に出ます。最終目的地はアラスカ。物欲を一切捨てて、厳しい自然の中で生活するためです。
冒頭部分からアラスカに入り、雪の広野を歩き続ける主人公。荒野での厳しい生活の細部を描写し続けるのかと思ったら、各地を放浪し、いろいろな人と交流しながら、ゆるゆるとアラスカに向かうという描写が入ります。ヒッピーの夫婦、放埓なカップル、大農園で働く農夫たち。主人公は一緒に生活したり、働いたりしながらヒッチハイクを続けてアラスカにたどり着きます。
何故、主人公は明るい将来が約束されている生活をすてて荒野に入ったのか?それは複雑な家庭環境のためでした。主人公の父は主人公とその妹の父親ではありますが、その母親とは正式な夫婦になっておらず、別に妻と子がいました。そのことで両親は毎日のように諍いを繰り返していました。その姿を見ているうちに将来に、もっと言えば人間関係というものにすっかり絶望してしまったのでした。
先に述べたような人々とのふれあいの中で、人と人とのつながりへの絶望は軽減されるのですが、それでも彼の決意は変わりませんでした。
製作者の意図はよく分かるのですが、それにしては主人公の生活は中途半端でしたね。荒野に打ち捨てられていたバスを見つけ、その中で暮らすのです。結局文明を捨て切れていません。で、最後は猟師の仕掛けた罠にかかって死んでしまうのです。この結末も中途半端。主人公の成し遂げたかったことは一体なんだったの?という疑問ばかりが後に残る結末でした。
by lemgmnsc-bara
| 2010-01-11 19:59
| エンターテインメント