2009年 09月 16日
E.W.ハイネ2冊
ここのところ社内資格取得のための試験勉強に追われていたので、肩の凝らないものを読んで気分転換しようと「積ん読山」から引っ張り出したのが、標題の2冊。表紙の「ショート・ショート・ストーリー」の文字に引っ張られて衝動買いしたので、この作者の作品を読むのは初めてだし、作者についての予備知識は全くありませんでした。
訳者によれば作者はドイツ人で、現在はバイエル地方に住んで創作活動に励んでいるそうです。短編だけでなく長編も多数上梓しているそうで、ドイツではベストセラー作家の一人に数えられるそうです。また、創作活動に専念する前は建築家として南アフリカやアラブ連邦などで暮らしたこともあるようです。作品にも南アフリカの治安の悪さを背景にしたものや、アラブ諸国の風俗を描き出しているものがありました。
さて、『まさかの結末』の方で面白いと思った作品は『ほんと、男って…』と『いばら姫効果』ですね。前者は男を手玉にとって一財産築いた女が、最後に食らった強烈なしっぺ返しを描いたもの。ぴりりとスパイスの効いた作品でした。後者は往年の星新一氏の作品のようなテイスト。長さにして3ページほどでしたが、見事な落とし方でした。
作者は『-顛末』の巻頭で、短い作品が多い理由について自らこう語っています。「わたしとしてはただ、自分が読者だったら読み飛ばしそうな箇所を消すように努めているだけです。」なるほど、無駄な文章は全くと言ってよいほどなく、つかみからオチまでシンプルにまとめられていて読みやすい作品ばかりでした。
『-顛末』のほうでは『勝敗は女性の手に』と『店内の死体』の2編が印象に残りました。前者はバイオテロの恐怖を描きながら、アメリカの一極支配をちくりと皮肉っています。後者は前述した、南アフリカの治安の悪さを背景に、見事なトリックを描ききっています。
久しぶりにショートショートの魅力を味わわせてもらいました。是非長編の方も読んでみたい作家です。
by lemgmnsc-bara
| 2009-09-16 20:20
| 読んだ本