2008年 12月 28日
『やすし・きよしの長い夏』を読んだ
毎日新聞専門編集委員近藤勝重氏による横山やすし・西川きよしコンビのルポルタージュ。1986年に西川きよしが参院選に出馬し当選するまでを、相方横山やすしの言動を中心に描いています。
当時大学生だった私は、きよしが当選後にやすしと出た番組を観た記憶があります。そのなかできよしが「今後は漫才も福祉のために役立てて行きたいと思う」というような抱負を語ったのに対し、やすしは「俺は俺のために漫才すんのや。漫才に福祉も糞も関係あるかい」とタンカを切ったのを覚えています。私ですら、きよしの優等生然とした発言に違和感を覚えたのですから、骨の髄まで芸人だったやすしにしてみれば、笑いという世界に福祉という異質な価値観を持ち込もうとした、きよしの姿はちゃんちゃらおかしく映ったのでしょう。
熱狂的な漫才ブームは去っていたとはいえ、ボケとツッコミが変幻自在に展開する彼らの漫才は円熟の時を迎えつつありましたから、コンビの解散にも繋がりかねない、きよしの突然の立候補はやすしにはある種の裏切り行為に感じられたのではないでしょうか。
やすしが後に度重なる不祥事で「自滅」していった一因はコンビの相方の裏切りにあるような気がしてなりません。
参議院議員となったきよしについては、立候補当時太平シローがよくモノマネしていた「大きなことは出来ませんが、小さなこともやりません」という言葉の通りで一体何をやったのかが伝わって来ません。私が無知なだけなのかも知れませんが・・・。
やすしは12年前に何者かに殴られたのが原因とされる脳の障害でなくなりましたが、あのままコンビを解消せずに漫才という芸をつきつめていっていたら一体どんな笑いを魅せてくれたのかということを考えると残念でなりません。最近、ヴァラエティー番組に出ては、申し訳程度のコメントを述べるにとどまっているきよしを見るにつけこの残念さは募るばかりです。
by lemgmnsc-bara
| 2008-12-28 08:49
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